気づけばもう8ヶ月くらいブログを書けていなかったけれど、ここ数年欠かさずに続けている年末の振り返り記事はなんとかと思い、駆け込みで筆を執っている。今年はお店もあるにもかかわらず、珍しく12/27,28くらいにはだいたい仕事が納まり、年末はゆっくりと大掃除やお店の整備、そして来年の計画を立てながら、本や映画を堪能しようと思っていたのだけれど、自宅が予想以上に荒れ果てていて大掃除にかなりの時間がかかり、ようやく今日の昼過ぎに終わった(ということにした)という有様。お店の整備や来年の計画は年明けにまわすことにした。しかし、大掃除に思った以上に時間が取られたこと自体はしんどかったけれども、これはこれで必要な時間だったという気もする。僕はけっこう家事が好きで──もちろんそれは子育てや介護などをしていない比較的ゆとりのある状態だからということは多分にあると思うが──、それはなんというか生活環境を再構築しているような感覚があるからなのだけれど、大掃除は特に生活の足場を修繕・制作している感覚が強い。今年は本当に、前半はお店の立ち上げ、後半はお店の運営に加えて編集業のほうの多忙にかまけて、ここ数年ではいちばん自宅の環境が劣悪化してしまっていたのだけれど、それゆえになんというか地に足が着いていないような感覚もあり、大掃除を通じて生活のリハビリテーションをしているような心持ちになった。
というわけでこの振り返りブログの執筆も年の瀬ギリギリになってしまい、本当は激動だった政治や経済、テクノロジーなどについても触れたいのだけれどそんな余裕はなく、最低限の自分の動きだけ振り返る。
やはり今年の大きなトピックとしては、書店など「bookpond」の立ち上げだろう。ちょうど1年前の2024年12月、長崎移転のため閉店した白楽の「ブックカフェ はるや」の跡地で、書店を軸とした小さな複合文化施設を開こうと決めた。その経緯についてはnoteで連載していた「書店(など)制作記」でリアルタイムで半年間綴り続けたので詳細はここでは省く。ちなみにこの「制作記」は書籍化を予定していて、なんとか来年の前半には形にできたらと思っている。とにかく2025年の前半は手探りで構想を考え、仲間を集め、手を動かし、そしてまた構想を修正して……という毎日で、初めてのリアルビジネスの大変さと肌感を思う存分に味わった。本当にたくさんの方々に応援と支援をしていただいたのだけれど、とりわけクリエイティブ・ディレクションを担ってくれた守屋輝一くん、空間デザインを担ってくれたアキナイガーデンスタジオのみなさん、そして全面的に推進してくれた並木里圭さんには深い感謝をしている。
そして7月末から12月までの約半年、手探りで店舗運営をしてみて、これもまた本当に刺激的な毎日だった。そもそも書店はおろか接客業の経験もほとんどない中、自分の「こんな場所があったら良いのではないか」という感覚だけを頼りに、日々手探りで店舗運営を重ねていき、おそらくサービスや体験として至らない面も多々あったと思うのだけれど、ありがたいことに常連さんからはるばる遠方から来てくださる方までたくさんのお客さんに恵まれ、少ない営業日ながらも、なんとか「お店」らしいかたちになってきたのではないかと思う。棚作り、喫茶・喫酒など、本当に素人からのスタートで当然まだまだ道半ばながら、少しずつ良いものになってきている手応えもある。そして「ひとまず最初は毎月やろう」と決めたTALK LIVEも、ありがたいことに毎回素晴らしいゲストの方々に出演をご快諾いただけて、その場ならではの化学反応が生まれるライブ感あるトークが実現できた手応えがあるし、たくさんのお客さんに恵まれ、良い評価もいただけるようになった。それから恐る恐る始めた一棚書店「booktope」もすぐに予約が埋まり、個性的で素敵なお店と棚主のみなさんに参画していただけているし、読書会や勉強会でbookpondを利用いただける機会も増えた。何よりお客さん、書店業界の諸先輩方、本のつくり手のみなさん、取材いただくメディアの方々、そして白楽というまちの個性豊かな住人たちと、お店を始めたからこそ生まれた新しい出会いがたくさんあったのが本当に楽しかった。
こう書くとすべてが順調だったかのように見えるけれど全然そんなことはなくて、ありがたいことに収益に関しては当初の想定程度かそれを少し上回るくらいの数字が出ているのだけれど、ふだんの運営を一人で回すことの限界にかなり直面してきている。編集業と二足のわらじの物量的なしんどさもそうだし、自分ひとりで企画して仕掛けていくことの質的な頭打ちも痛感している。というわけで来年は、日々の運営でも、お店での大小さまざまな催しの企画でも、色々な人の力をいっそう借りていく、ことをテーマにしていく。具体的な構想はこの年末年始で詰めているところなのだけれど、何かしらのかたちで手伝ってみたい、あるいは何か楽しい試みをしてみたいという方は、ぜひ気軽に声をかけてもらえたら嬉しい。
12/28(日)、オープンしてます。
— bookpond (@bookpond_) 2025年12月28日
年内最後の営業日。店主は12/26から30日の5日間がなぜか一年で一番好きで、この否応なく色々なことが締まっていく空気感を満喫してます。
年末年始に読む本を探しにでも、たんに一休みにでも、ぜひお気軽にお越しください。
◆営業時間:13:00-19:00◆
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新入荷、再入荷。読書欲がバチバチに刺激されます。 pic.twitter.com/hbaGxSCz0V
— bookpond (@bookpond_) 2025年12月24日
TALK LIVE「【瀬下翔太×中路隼輔×三宅香帆】ビジネスと人文・カルチャー、水と油か?どう共に語るか?
— bookpond (@bookpond_) 2025年10月14日
」、とても熱い夜となりました。会場参加チケットは見切れ席ともに完売、配信チケットもたくさん買っていただき、みなさま本当にありがとうございました。… pic.twitter.com/4iXkZEXKB5
本日はライター、ノベライザー、映画批評家の相田冬二@aidatoji さんが主宰する「相田冬二 あたらしい文章教室」様に貸切利用いただきました。… pic.twitter.com/qTTeENUUew
— bookpond (@bookpond_) 2025年11月8日
「本は港」、盛況のうち終了。
— bookpond (@bookpond_) 2025年12月7日
本当にたくさんのお客さんに来ていただいて、本が好きな人が横浜にこんなにたくさん集まっているという事実に、まずとても勇気づけられます。bookpondとしてもとてもたくさん本を買っていただけて、行きよりめちゃくちゃ軽くなったスーツケースを手に白楽に戻りました。… pic.twitter.com/ca856v1JnD
そしてその一方で、編集業のほうでもこれまでのプロジェクトに加え、新しいチャレンジに色々と取り組んだ年になった。細かい紹介はここでは省くけれども、今年はより一層、人文的なものをさまざまな形で各所へとつないでいく取り組みにチャレンジしてきた一年であるかのように思う。そして、あらためて自分がやりたいことは、bookpondも含め、「人文」の豊かさや可能性を、ときにこれまでの形にとらわれず、さまざまに探究していくことなのだなと再認識した一年でもあった。これまであえて打ち出すことに慎重になっていたが、来年はいよいよ「人文」という言葉を自分なりに引き受けて、それを自分の専門性である「編集」と掛け合わせ、大きく打ち出した活動をしていきたいと考えている。なんというか、お店をはじめたからこそ、「編集」の楽しさとか可能性とか、あるいはお店との化学反応みたいなものを、より強く意識するようになったところはあるかもしれない。そしてこの編集業に関しても、明らかにやりたいことに対して自分一人では足りないので、積極的に仲間を集めていきたい。「人文」と「編集」に関心のある方、こちらもお気軽にご連絡いただけたら嬉しいです。
そして日々バタバタとしながらも、なんとか読書ペースだけは生命線として落とさないように心がけた(それでも落ちてしまったことはあるが)。年末に「今年よかった本を紹介する」系のイベントに出演する機会もあったのでそこで紹介した本も踏まえつつ、今年読んだ中でも特に印象にのこった本はざっとこんな感じ。ただあまり腰を落ち着けて読めなかった気もするので、来年はしっかり朝に本を読みたい。
・エヴァン・トンプソン『仏教は科学なのか?私が仏教徒ではない理由』
・齋藤 直子、木村 博美『「自分を変える」ということ アメリカの偉大なる哲学者エマソンからの伝言』
・ラーニャ・M・ターマン『リアル・メイキング』
・中野慧『文化系のための野球入門──「野球部はクソ」を解体する』
・菅原潤『上山春平と新京都学派の哲学』
・『フィルカル 特集:企業内哲学』
・橋本倫史『2024年の本部町営市場』
・福島真人『「実験」とは何か:科学・社会・芸術から考える』
・平野紗季子『私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。』
・浅沼シオリ・早乙女ぐりこ・武塙麻衣子『三酒三様』
・石田健『カウンターエリート』
・田村正資『問いが世界をつくりだす』
・川上弘美『神様』
・田川建三『イエスという男』
・別冊ele king『アンビエント・ジャパン』
・生湯葉シホ『音を立ててゆで卵を割れなかった』
・吉田恵美子『想いはこうして紡がれる』
・小野純一『僕たちは言葉について何も知らない』
・小野純一『井筒俊彦 世界と対話する哲学』
・橋本努・金澤悠介『新しいリベラル』
・森元斎『具体性の哲学』
・独歩ちゃん『足りなさを味わう』
・neoコーキョー『vol.3 自宅の見えない力』
・相田冬二『あなたがいたから』
・橋本倫史『青葉市子 十五周年』
・『いいお店のつくり方』
・アグネス・アーノルド=フォスター『ノスタルジアは世界を滅ぼすのか:ある危険な感情の歴史』
・ジョセフ・ヒース『資本主義にとって倫理とは何か』
・福嶋亮大『メディアが人間である』
・『FASTFORWARDS』
・稲田豊史『ぼくたち、親になる』
・松本祐樹『ルポ失踪』
・濱野ちひろ『無機的な恋人たち』
・朝倉圭一『雑考』
・横山紗亜耶『絶望と熱狂のピアサポート』
ドラマや恋リアはそれなりに観て、映画は本当に全然観られなくて、音楽はおそれなりに聴いたかも。が、ごめんなさいここを振り返る気力と時間がもう残ってないので、また改めて。一つ言えるのは、今年は本をたくさん仕入れさせていただいたり、「はるや」の開店祝いにお花の寄せ植えをお願いしたりとしたこともあいまうまて、寺尾紗穂さんの音楽や言葉に今まで以上にたくさん触れ、糧となった。
音楽家&文筆家の寺尾紗穂さんが作っている美しい季節の寄せ植えを、旧はるや(横浜市白楽)の跡地に開業する「bookpond」さんにいただきました。6月6日(金)、11時から18時までの営業です。ランチは、「土&日曜日」のご提供になりますhttps://t.co/BIt16TZfs7https://t.co/ga6b9yG37s pic.twitter.com/yCVu4drWZo
— ブックカフェはるや「喫茶と本とちょっと酒」 (@kohiyamaso) 2025年6月6日
というわけで若干雑になってしまったけれど、なんとか今年も駆け込みで。冒頭の大掃除のくだりを回収するわけじゃないけれど、来年はとにかく「生活」を真剣に構築していくことを大前提として重視したい。今年のバタバタも楽しかったけれど、常に大きな疲労感に襲われていたような気もするし、やはり自分はある程度「生活」を整えないと良いパフォーマンスができないタイプだと思う。ストレスがかかりすぎない範囲で、仕事やお酒を節制して朝の静かな時間を守りつつ、真摯に「生活」していきたい。
そしてもう一つ、ところどころ触れていたけれど、bookpondも編集業も、来年はしっかりと、より一層「人の力を借りる」をテーマにしたい。具体的には、両事業をあわせて法人化し、小さくても「組織」にしていき、個人事業状態を少しずつ脱し、(多少収益は落ちても)無理なく、自分にはできないことがしっかり実現していく体制をつくりたい。これは裏を返せばいよいよ「経営」に向き合う時が来たとも言えるかもしれない。
二つをまとめると、こうも言えるかもしれない。「生活」を守るためにも、「経営」によって個人事業を脱する。あとはすでにいくつか(「制作記」の書籍化も含め)来年の書き手としての大事な機会をいただいているので、「書く」ことにより一層向き合う一年にもなると思う。
それではみなさん、来年もどうぞよろしくお願いいたします。このブログを書くことも「生活」を守ることの重要なピースだと思うので、来年はもう少し更新していきたい。
良いお年をお迎え下さい。




