Masaki Koike's blog

編集などを生業としています。モヤモヤの吐き出し、触れたものやつくったものの所感の備忘録など。

分藤大翼『からむしのこえ』を観た

今日は片道2時間ほどかけて、青梅まで足を運び、ずっと観ねばと思っていた『からむしのこえ』をようやく鑑賞。

映画「からむしのこえ」

 

からむしは、結果できあがる反物がとても美しいだけではなく、とにかくプロセスすべてが、映像や写真だけでも、ため息が出るほど美しい。生い茂る苧麻が、一つひとつの手仕事によって織物へと変わってゆくさまを見ていると、自然と人工の境目が融解する。

 

少し前に、クラフト工房La Manoという施設を見学させてもらったことがある。そこではまさに、藍や綿、さらにはよく見る玉ねぎの皮までもが、一つひとつの手仕事によって、美しく愛おしい織物へと変わってゆくさまを目にした。

クラフト工房La Mano

 

『からむしのこえ』では、さらにその前段階、言ってみればただの「草」の段階から見ることができた。

 

帰りしな、隣接する建物でひらかれていた工芸フェアで、迷いなく、からむしのコースターを購入する。どうも青梅は工芸がさかんな街なようで、他にも藍染をはじめさまざまな工芸品が出展されている。

 

来年の春か夏には、ぜひ昭和村を訪れてみたい。

 

そして、なんとも運命的な出会いも。監督を務めた分藤大翼さんのアフタートークの中で「からむし自体はありふれた雑草のようなもので、そこらへんに生えている」という話が出る。気になって、少し調べてみると、なんと僕の出身地である川崎市麻生区の「麻生」は、からむしから来ているのだと知る。あまりに驚いた。僕は地元に対して、歴史のないニュータウンという印象を持っていて、同じ問題意識を持つ友人と勉強会をしていたりもする。しかし、どんなニュータウンにだって、開発前の歴史はある。足元はまだまだ、深く潜れる。

麻生区 はるひ野・若葉台・黒川の生活事典:麻生区名の由来…「からむし(苧麻)」

 

でも、一つモヤモヤしたのは、映画の客層だ。同世代はおろか、ひとまわり上くらいでもほとんど見当たらない。僕のような、もともと工芸はおろかアートにすら大した土地勘のない人間でも、いやそういう人間こそが、受け取れるものがあるはずなのに。その橋渡しのような仕事がしたい、そんな気持ちが、ふつふつと湧いてくる。

 

ここ最近、色々と今後の仕事について思い悩んでいた。でも、なぜだか昨日かおととい、ふと吹っ切れたというか、自分の内面ばかり見ていても仕方がない、とにかく改めてたくさん読み、観て、聴き、足を運ぼうと思い立った。それで何が醸し出されるのか、庭づくりのように半ば第三者の目線で眺めようと。さっそく、その判断がよかったような気がしてくる。

 

しばらくは、このブログもそうした庭として使いたい。