Masaki Koike's blog

編集などを生業としています。モヤモヤの吐き出し、触れたものやつくったものの所感の備忘録など。

平日の朝10時過ぎ、意外と喫茶店がやってない

平日の朝、10時から11時くらいの時間帯の街を歩いてみると、意外と開いている店が少ないことに気がつく。

 

昨日、たまたま朝に地元の病院へ行く予定があり、その後適当なカフェで少し仕事をしようとしたら、ほとんどの店が空いていなかった。もちろん最寄り駅の近くにいけばチェーンのコーヒー店はいくつかあるのだが、病院が駅から少し離れた場所にあったこともあり、ほど近い商店街の中の個人経営の喫茶店でも行こうかと思ったのだが、たいていの店はお昼頃にならないとオープンしないようだった。結局、諦めて家に帰った。

 

ドトールスターバックスに慣れてしまった僕たちは、カフェといえば朝7時頃から夜遅くまで開いていることが当たり前かと錯覚してしまっている。しかし、それは潤沢な資本によって、十分な数のスタッフを雇えているからこそ成り立っているにすぎない。ほぼマスター一人でまわしているような個人経営の喫茶店で、モーニングからディナーまで毎日店を開けていたら、早番ダウンしてしまうだろう。よっぽど意欲があるか、利益率がいいかでもしない限り、とりわけ多くの人が働いている平日の朝10時過ぎなんかに喫茶店をあけるという意思決定はしづらいだろう。

 

最近、近所に新しいカフェ兼飲み屋ができた。平日は一般企業で働いている人が、土日の間だけ開いているものだ。それだけ聞くと「副業カフェなんて優雅だね」と思う人もいるかもしれないが、実態は真逆だろう。平日フルで働いて、土日にカフェをやるということは、基本的に休みがないことを意味する。祝日は店をあけない。唯一の全休が取れる日だからだ。土日もランチはやらない。回転率が高くて一人だとまわらないのと、昼から夜まであけ続ける体力だってもたないだろうからだ。もちろん、その店主がやりたいからやっているだけであることも事実で、それで「休めない」なんてわがままじゃないか、という理屈も正しい。しかし、少なくとも僕はそのカフェにとても居心地の良さを感じたし、それを作り出しているのは生身の人間で、四六時中あけ続けたら身体を壊してしまうこともまた事実だ。

 

安易な資本主義批判をするつもりはまったくない。「脱成長」なるものが欺瞞だということは、すでに多くの識者が喝破していることであるし、直観的にも資本主義から「脱」した社会なんてイメージできない。

 

しかし、あまりに便利でシステマティックな社会システムに慣れてしまうと、「お店は人が開いている」という当たり前の事実ですら、忘れかけてしまう。朝10時過ぎに喫茶店が開いていなくてテョ雨にくれてしまった、昨日の僕のように。