Masaki Koike's blog

編集などを生業としています。モヤモヤの吐き出し、触れたものやつくったものの所感の備忘録など。

『自炊者になるための26週』実践編:第4週 セブンにもサイゼリヤにもない風味

一面の雪景色となったこの二日。幸い、外アポがなかったので家から一歩も出ず、たまに外の雪景色を楽しむというきわめて都合のいい過ごし方をさせてもらった。ただ、むしろ家から出る余裕もないくらいの作業と打ち合わせに忙殺され、ヘトヘトだ。自炊を楽しむ余裕なんてほとんどないが、そんな中でも食事の時間だけは簡易ながらも手を動かすことが、そしてドラマを観ながら束の間の休息をとることが癒しになる。そしていま、日曜の冬にわかれてのライブの物販で買った、あだち麗三郎さんのパートナーの方のつくったラー油が、小さくもたしかな彩りを与えてくれている。邪魔しすぎない程度の、ほどよくカラフルでまばらな風味のスパイスがとてもたのしく、卵かけご飯も納豆もインスタントラーメンも一気にたのしくなる。これは寺尾さんのようにリピーターになってしまう。

 

そんな中で、今日も朝から一心不乱に仕事をし、1930頃には力尽きる。そして、家に大した食材も残ってなかったのだが、だからこそ飲みながら、一品ずつ自由にテキトーにつまみにする。最初はIPAを飲みつつ、パックの豆腐をチンしてポン酢をかけて湯豆腐。そして、賞味期限が切れそうな油揚げ2枚をフライパンで焼いて、醤油をたらして食べる。最近これにはまっている、甘さとパリパリ感がたのしい。あと使いかけの玉ねぎも焼いて、でも足りないからチンして、適当にポン酢と醤油をかける。そしてメインディッシュに、冷蔵庫に残っていたウィンナーを焼いてちょっとだけ塩胡椒を振る。あとは締めに、味付けのり、そして先週末のイベントの余りでもらってきた歌舞伎揚をポリポリしながら、いつの間にか移行していた金麦を流し込む。この間、キッチンでスマホ×AirPodsNetflixで『春になったら』の最新話を見切るという、三浦哲哉が聞いたら怒りそうな意識の低い晩酌。でも、いろいろとイライラしている気持ちが、いつのまにかおさまっていた。食後はちょっと前に買って楽しみにしていたオレンジワインを空けて、Kindleで漫画、そして半年前に買って積んであった寺尾さん編集のエッセイ集を読む。特に追加でお金をかけずに、2時間ほどでけっこうリラックスできたので、お風呂上がりになんとか、今週中の自炊者報告を。

 

 

さて、今週はセブンにもサイゼリヤにもない風味、という題。これは決してセブンやサイゼを貶めて手料理を礼賛するとかではなく、むしろ稲田俊輔『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(これは本当に名著)に代表されるような、昨今のチェーンのグルメ的秀逸さを正当に評価する流れを汲んでいる。ただ、その上で自炊にしか出せないものとして「個体差」を挙げる。季節の違い、スーパーの違い、もっとシンプルに個体ごとの違い。土井善晴も言っていたように、そうした違いが、ただ旬のものを買っているだけで自然と出てくるのが自炊の面白いところであり、飽きないところ。これはクオリティは高いが規格化されたチェーン店には出せない、という点を三浦は指摘する。

 

そして、今週の実践編は、青菜のおひたし、あるいはトマトパスタ。結論、めんどうだからつくらなかった。ほうれん草のおひたしはたまにつくるが、だし汁を30分冷ましている余裕が今週はない。ただ、冬のほうれん草のおいしさや安さはよくわかるし、何ならおひたしをつくろうと買ってきてあったので、きのう常夜鍋をつくった。恥ずかしながら、自分はここ数年ではじめて常夜鍋を食べるようになった。そもそも実家には常夜鍋を食べるならわしがなかったし、外でもなかなか食べられない。ただ、昨日何食べたで知って、簡単そうだと思ってやってみたらとてもハマった。ほうれん草と豚バラの相性が素晴らしく、文字通り毎晩だって食べられる。これは冬だからこその、そしてほうれん草が安く美味しそうなときこその味わいであり、「個体差」を味わっている、ということで許してほしい。